2010年5月28日金曜日

ピアノをやめた日#2

小さい頃から・・・いや、まだお腹の中にいるころから
とにかくよく動く子だった。
チャレンジ精神旺盛で怖いもの知らず。
太陽の下で遊ぶことが好きだった。
そしてそれは、小学3年生となった今も変わらない。


息子が野球に興味を持ち始めたのは、
たしか、まだ彼が幼稚園児のころ、野球をテーマにした
人気アニメ「メジャー」を見始めたのがきっかけだったと思う。

どんなテレビ番組やDVDにも、それほど興味を示さなかった彼が、
このアニメにだけは、食いつき具合が違ったようだった。

主人公、五郎に憧れてか、サンタにもらった自前のバットを持って

ご近所のバッティングセンターへと通う日々。
誕生日には野球グッズをせがみ、叔母に買ってもらったグローブは、
擦り切れるほど使い込んだ。 

小学校に入ると、息子の野球熱は益々ヒートアップ し、
近所に野球仲間ができると、毎日のように公園で野球遊びをして帰るようになった。
急いで宿題を終わらせると、グローブとバットを持って一目散に駆け出し、
門限ぎりぎりまで、ときにはそれを過ぎ、母親に叱られることもしばしば・・・

テレビをつけると野球中継を食い入るように見つめ、
本を開けばピッチングについて研究し・・・
それは、誰に何を言われたわけでもなく、ただ、内なる情熱に従って
突き進んでいるのみ。

素人の私から見ても、彼の野球は日に日に上手くなっているのが分かった。
専門家がついて教えてくれたわけでもなく、ただ本人の「好きだから」という
理由だけで、人はここまで成長するのかと驚いた。

スポーツ系の習い事は、練習量が多かったり、親にもいろいろな世話が増え、
それなりの覚悟が必要だが、それもこれも全部受け入れて、腹を据えさせるのに十分な
情熱が息子にはあった。

小学3年生になって息子は、学校のソフトボールチームに入団した。
週に3日の練習と、ほぼ毎週日曜日の試合と・・・
疲れるどころか、毎日素早く宿題を終わらせ、練習着に着替え、
時間のずいぶん前から練習場へと向かう。

そして、24時間という限りあるキャパシティの中で、野球と
4年間続いている空手を残し、ピアノを手放す決断をした。

大好きな先生から何度も引き止められ、息子も私もその度に思い留まった。
更に続けることで、何かが変わるかもしれない・・・とも思った。


でも息子は結局、「できること」よりも「やりたいこと」を選んだ。
この決断が正しかったのかどうか・・・それは誰にも分からない。


習い事に対する親の考え方は、人それぞれだと思う。
ある者は、そのものの技術習得の為に全力を注ぎ、
ある者は、その中で他の何かを学んで欲しいをいう目的で我が子を通わせる。


恐らくそれは、一人一人違った子供の可能性、それぞれの体質、性格に合わせた、
あるいは、何か別の思いがあって親の選んだ、それぞれがふさわしい形なのだと思う。


9年間続けた私のピアノは、たとえその間、本人の「情熱」が乏しかったとしても、
その継続の中での経験と、それにより生まれた自信は、何らかの形で今の自分の糧と
なっているに違いない。


その後私は、自分なりに「これだ!」というものに出会い、
生まれて初めて感じたその強い情熱が、まぎれもなく
自分にとっての生きがいであることを知った。



「好きなこと」とは、理由無き情熱であり、
身体の奥底から後から後から、泉のように湧き出てくるものであると思う。
人それぞれに形の違ったその情熱は、もしかしたら
私達一人一人が、生きがいを持って人生を行き抜くための、
人間に与えられた道しるべのようなものなのかも知れない。


息子は、ごく早い段階でこれに出会っているのだろうか。
それとも、残りの人生で他の何かに出会うのか・・・
答えは風の中・・・


でも、少なくとも今、これほどまでに我を忘れて没頭できる「野球」が、
息子にとっての生きがいなのではないかとつくづく思う。
 

彼のあの、真剣な眼差しを見ていると・・・

2 件のコメント:

  1. 好きなことに出会えるって素敵!
    なろうと思ってもなれるものではないし。

    この先どうなるかは置いておいて、
    まずは毎日楽しみが増えてよかったね!!

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  2. お互いの息子達、打ち込む物はそれぞれ違うけど、
    本人達がおもいきり情熱を注げるものを
    静かに見守っていきたいね。^^
    Yくんのそろばんも将来が楽しみ!
    Kくんもこの先何かに出会うんだろうね。^^

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